2018年6月22日 6:56 pm

最後に、個人再生手続について、簡単にではありますが、まとめてみたいと思います。

個人再生手続は比較的新しい債務整理手続(とはいっても、現行の手続は平成13年から行われております)であり、

自己破産や過払い金などと違い、耳慣れない方もおられるかもしれません。

 

【個人再生の意味について】

個人再生とは、借金を返済する資金の融通が一般的・継続的につかない場合に、

必要な書類を準備したうえで再生計画案を立てて裁判所に提出し、認可後に返済を行う手続をいいます。

債務総額に一定の上限があり、安定した収入が要件となりますが、債務総額を圧縮したうえで債務を返済することが出来ます。

 

【任意整理・自己破産との違いについて】

①任意整理との違い

任意整理は、あくまでも弁護士を通じて債権者と交渉を行う手続であり、裁判所を通じて交渉を行うことはありません。

また、返済する金額も原則として元本以上となることがほとんどです。

もっとも、返済期間は交渉次第であることから、3年を超える期間であっても債権者と和解できることがあります。

 

これに対して、個人再生は、裁判所を通じて行う法的な債務整理手続です。

原則として債務総額を5分の1にした上で、債務を返済する手続となります。

返済期間は原則として3年間であり、例外的に5年とすることも出来ます。

 

②自己破産との違い

自己破産は、裁判所を通じて行う法的な債務整理手続である点で、個人再生とは共通していると言えます。

もっとも、自己破産は手続中に資格制限があり、警備業・保険外交員等の職に就くことが出来ません。

 

これに対して、個人再生手続は資格制限がありません。したがって、現在就いている職業に左右されることなく選択できる債務整理であると言えます。

もっとも、債務の額が0円になるわけではないので、一定の金額は再生計画案に従って、返済を継続する必要があります。

また、個人再生では、住宅ローン特別条項付きの再生計画案を提出することが出来る場合があります。その場合には、住宅ローンを支払いながら手元に住宅を残した上で債務整理の手続を取ることが出来ます。

 

【個人再生のメリットについて】

個人再生をすることによるメリットは、以下のとおりです。

①借金等が原則として5分の1になります。

②住宅ローン特別条項を利用して、手元に住宅を残した上で、債務整理できる場合があります。

③資格制限もありませんので、就業に支障がありません。

④弁護士への依頼後、債権者からの督促が止まります。これは、個人再生固有のメリットではありませんが、ご依頼者様にとってはメリットであると言えます。

 

【個人再生のデメリットについて】

①自己破産した場合よりも債権者に弁済する金額が多くなくてはならない(清算価値保証原則)ため、多額の資産を有する場合には、返済額も多額になってしまいます。

②個人再生手続開始決定時及び再生計画認可決定時の2回、官報に申立人の情報が掲載されます。

もっとも、官報を定期購読されている方はほとんどいないと考えられます。

 

【個人再生の誤解について】

①住宅は全て残すことが出来る?

住宅ローン特別条項を設けることが出来るか否かは、要件があります。

住宅の価値よりも住宅ローン債務の額が上回っている状態(オーバーローン)でなければ、

住宅ローン特別条項を付した再生計画案を提出することは出来ません。

 

②就職活動に影響がある?

自己破産と同様に、個人再生の事実は、個人再生手続開始決定時及び際せ計画認可決定時の2回、官報に掲載されます。

しかし、官報をチェックする人事担当者は少数であると考えられるため、

個人再生の事実が就職活動に大きな影響を及ぼすとは言えません。

 

③ETCカードは作れるの?

自己破産の場合と同様、クレジット機能付きのものは、しばらく作れません。

しかし、いわゆるデポジットのカード(掛けでの取引を行わず、使用した分を支払う形のカード)であれば使用できます。

 

④ブラックリストに載るの?

「ブラックリスト」とは、信用情報機関の事故情報のことをいいます。

債務整理の事実がこの事故情報に記載され、新規での借り入れなどに影響しますが、それ以外の面でのデメリットは基本的にはありません。

 

⑤住民票や戸籍に影響はある?

ありません。

これらの公的書類(パスポートなども含む)に個人再生を含む債務整理の事実が記載されることはありません。

 

【個人再生により減額される債務について】

主に、消費者金融・銀行からの借入金です。

減額されない債務もございますので、

詳細は弁護士等の専門家にご相談ください。

 

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